美術館などで絵画作品を鑑賞する際、「遠近法」のあり方を見比べるような機会に恵まれたことはございますか。数々の絵画作品のなかで用いられている「遠近法」には、「消失点」なるものが見つけられることが多いようなのですが、場合によっては「消失点」がみつからない遠近法を用いた作品に出くわすこともあるでしょう。また、時には「消失点」が作品のなかにみつからず、画面の外に複数みつかることがあるかもしれません。このような遠近法の技法は「二点消失遠近法」などと呼ばれているようです。この技法は、まるで舞台上で上演されている演目を数多くのオーディエンスが眺めているような視点を作品に投影しているような視点をみつけることができるかもしれません。絵画作品を鑑賞するにあたっては、作家が描こうとしている作品に向けられた視点のあり様をみつけることで、作品が制作された時代背景における人びとの姿を想い描くことにつながるかもしれません。社会構造の変化が絵画作品に投影される「遠近法」などの技法に少なからず影響を与えていることに気づいた当初は筆者自身も驚かされたものです。時代を越えて生き延びてきた絵画作品の多くには、人びとの興味が注がれるに等しいであろう何らかの理由がみつかるかもしれません。