額縁として独立した存在となって以降その形態は大きく二つに大別されています。古代建築をおもわせるような手の込んだ造りが特徴のタベルナクル額それとは真逆のような質素な造りのどちらかと言えば現代の額縁に通ずる箱型額縁です。更に箱型額縁には若干傾向の異なるリバース額縁と呼ばれるものも存在します。これは一般的に箱型額縁と呼ばれるものが外に向かうほど厚みを増すのに対し、逆に内枠の方がどちらかと言えば厚くなる傾向が見られるものを指してそう呼ばれています。例えば、ロンドンにあるナショナルギャラリー所蔵の16世紀初頭に描かれたとされるTitian(ティツィアーノ)作の「Portrait of Gerolamo (?) Barbarigo(男の肖像)」を収めら額縁がそれです。このリバース額縁の造りは飾る時を考えると周囲からの面との馴染みもよく自然であるとの評価がされていて魅力的とも言われる所以です。またリバース額縁にはもう一つ変わったところがあるものも見つかっています。それは当時大勢を占めていた金粉での表面処理ではなく、銀粉をつかったもの。金色という艶やかさと異なり銀粉は当初こそ輝くことは同じでもしばらくすると銀が酸化に伴い浅黒く変色し始めること。そこが逆に「いぶし銀」という言葉もあるようになんとも言えない良さを醸し出すと言う人もいたでしょう。さらに金と銀という二種類を用いた作品もあったと言われ今に残っていればさぞかし素晴らしい味わいを見せてくれたことでしょう。このような形式の額縁は、ヨーロッパで宮廷内にギャラリーが設けられるようになった時期とも重なり、箱型額縁は少しずつ主流の座を勝ち取っていったのではと考えられています。